眠れない夜の心理学 子どもを守るために

境界・感情・愛着・トラウマティックストレス・うつ・アディクション、認知行動療法…… 眠れない夜に綴ります。

認知行動療法ってどんなアプローチ?①人は「考えたこと」でできている

私たちは頭で考え、心で感じ、体を使って行動し、毎日を生きています。

 

認知行動療法は、人の「認知」「感情」「行動」「身体」という、互いに影響し合う一連のシステムに注目し、介入することで、変化を起こすことを目的とした心理療法です。

 

自己イメージや対人関係の改善、うつや不安、トラウマ症状の軽減など、さまざまな「問題」の解決に役立ちます。

 

人は、自分や自分の周りで起こる出来事を、瞬間的に自分のものさしでとらえ、自分なりの判断を下し、その判断にもとづいて行動を決定しています。

 

物事の善悪を判断し、「したいこと」と「したくないこと」「するべきこと」と「するべきでない」ことを区別することは、人間にとって必要不可欠な精神活動です。

 

私たちの出来事への反応の大部分は、同じパターンの繰り返しす。

 

これまでのさまざまな経験で「学習」し、身につけた( 習慣化した )ものの見方、考え方にもとづいて、その時々に起きることを次々と判断しているからこそ、私たちは、毎日多くのことに対処できるのです。

 

それだけに、ものの見方や考え方に偏りや歪みがあると、状況を適切に判断ができず、人間関係が難しくなり、うつや不安といったネガティブな感情を抱え込んでしまいがちになります。

 

そして、その結果、自分を追い詰めてしまう行動を繰り返してしまうことも少なくないのです。

 

私たちが、自分の周りで起こる出来事を、どう考え、どう捉えるのか(意味づけるのか)は、その出来事や関わっている相手について、また自分についてどう感じ、どう行動するか、その結果、自分や周囲についてどう思うかに直結します。

 

例えば、友だちと会っている時に、”友だちが時計をちらっと見た”という出来事があったとしましょう。

 

その瞬間、「私と話していても退屈なんだ」という考えが頭に浮かぶのか、「時間がないのかな?」という考えが浮かぶのかによって、その時に生じる感情や、その後の行動には違いが出てきます。

 

前者は、友だちの態度を自分の責任だととらえ、焦りを抱き、相手を楽しませなければいけないと考え、一生懸命になり過ぎてしまうかも知れません。

 

友だちと別れた帰り道に、自分ばかり話していたことを思い出して恥ずかしくなり、「どう思われただろう」と思い悩み、ぐったり疲れるかも知れません。それ以降、友人に会いづらくなってしまうこともあるでしょう。

 

そして、それまでにも持っていた「私はつまらない人間だ」という、ネガティブな自己イメージがさらに強化されることになるかも知れません。

 

当の友だちはそんなことはつゆほども思っていないかも知れないのに(多くの場合そうなのです)。

 

認知行動療法では、人の「感情」や「行動」は、「認知」( 現実をどのようにとらえるか、ものの見方や考え方、思考 )の結果だと考えます。

 

私たちは、自分の身に起こった「出来事そのもの」が、悩みを生むと思いがちなのですが、実際に悩みを生むのは、この例のように、出来事そのものではなく、その人がその出来事を「どう考えるか」なのです。

 

前者の「認知」「感情」「身体」「行動」のつながりを図にしてみましょう。

 

 

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このように、人の「認知」「感情」「行動」「身体」は連動する一つのシステムです。

 

誰にでも習慣化した思考や行動のパターンがありますが、私たちは普段はそれを意識することなく生活しています。

 

この「認知行動モデル」を作成することで、普段は意識されることのない慣れ親しんだパターンを見つけ、自分の「問題」を視覚化することができます。

 

自分に起こる出来事を新たな視点でとらえ直すことが可能になるのです。

感情②感情と脳とからだ

これまでみてきた理由によって、感情を押さえつけたり、見ないようにすることが習慣化していると、自分の気持ちが分からなくなることがあります。

 

何かあった時に「こんな時どう感じるべきなのか…」とつぶやいたことはないでしょうか。

 

また、ネガティブな感情を押さえつけていると、ポジティブな感情も押さえつけることになってしまい、生き生きした感情体験ができなくなってしまいます。

 

ネガティブな感情だけを自分から遠ざけることはできないのですが、ネガティブな感情を持った時に、それを否定せずに受けとめることは難しいものです。

 

ネガティブな感情、たとえば誰かに対して怒りの感情を持った時に、「怒るなんて大人気ない」「怒るなんて心が狭い」と考えて、何とか自分の怒りを収めようとした経験はないでしょうか。

 

そう考えることで容易に切り替えられるなら問題はないかも知れません。

 

しかし、なかなか切り替えることができずに、切り替えられないことで焦りや不安といった不快な感情まで抱え込むことになって、よけいに苦しくなっていく…そんな経験をしたことがない人はいないでしょう。

 

また、自分では押さえ込んだつもりでいた誰かに対する怒りが、何かのきっかけで再燃したり、怒りの矛先を別の人に向けてしまったり、衝動的で不適切な行動に転化してしまうこともよくあります。

 

なぜ、ネガティブな感情を意志の力で押さえ込むことが難しいのでしょう?

 

下の図を見てください。脳は、①大脳皮質と前頭前野、②情動や感情を司る大脳辺縁系、③生命維持を司る脳幹という3つの部位に分けられます。

 

 

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①の大脳皮質は、思考、衝動コントロール、新たな学習など理性を司る部位です。その中でも、前頭前野はさまざまな情報を統合する重要な器官です。

 

②の大脳辺縁系は、感覚情報を集め、ホルモン分泌や自律神経系の中枢でストレス反応にかかわる器官です。

 

そして、③の脳幹は、脊髄につながる器官で、呼吸や体温調整、心拍数、消化吸収などの身体調整、生命維持を司っています。

 

何らかの出来事をきっかけに、大脳辺縁系でネガティブな感情、たとえば「怒り」の感情が生じた瞬間に、ホルモン分泌や自律神経の中枢システムが脳幹にその情報を伝達します。

 

すると、自律神経系が呼吸を早め、心拍数や体温、血圧を上げ、筋肉を緊張させて、怒りの感情にマッチするように身体を「怒りモード」に切り替えるのです。

 

大脳辺縁系と脳幹は、どちらも人間が生命を維持するための本能的な自己防衛のシステムですから、その力は何よりも強力です。

 

怒りや恐怖といった感情が生じる状況では、私たちの脳は、理性や思考による判断を待たずに、自分を守るための行動を取ろうと身体がただちに反応するのです。

従って、大脳皮質が、感情と身体の状態に抗して、「怒るなんて大人気ない」「怒るなんて心が狭い」と自分を責め立てたところで、とうてい太刀打ちできないのです。

 

つまり、感情を「いい悪い」で価値判断し、押さえ込もうとする試みは、脳内に葛藤を生じさせ、ネガティブな感情を増幅させて、長引かせるだけなのです。ではどうすればいいのでしょう。

 

どんな感情に対しても、「自分はいまこう感じているなあ」と、価値判断しないでそのままを受けとめることによって、脳内の葛藤が解消されていき、神経システムに変化が生じて、感情も身体の状態も「平常モード」に戻り、落ち着きを感じることができるようになるのです。

 

「こう感じてはいけない」「切り替えないといけない」と自分に言い聞かせるいつものパターンを、「こう感じている」とそのまま受けとめるパターンに転換していくことで変化が生まれるのです。

 

私たちにとって、感じることは自己防衛のために体に備わった機能です。

 

感じること自体が問題なのではなく、感情を見ないようにしたり、感情に飲みこまれて、シグナルとして使えないことが問題で、これは、前述した「ダメダメ教育」や「『らしさ』のフィルター」の結果だと言えます。

 

私たちは、「怒ってもいいよ。でも、叩くかわりにこんなふうにしようね」という教育を受けないで育ちました。

 

そして、「らしさ」のフィルターを通すことで、感情を価値判断することに慣れ親しんでいます。自分の感情とうまく付き合えなくても当然です。学び直すのはいつからでもできるのです。

 

そして、大切なのは、「感じることと行動することを区別する」ことです。

 

私たちは、怒りを感じること自体をダメと考えがちですが、実は「感情にいい悪いはない」のです。

 

同じように怒りを感じても、ある人は相手に暴言を吐き、別の人は「そういうことをするのはやめてください」と相手に伝える、というふうに、その感情をどのように外に向かって表現するかは人によって違うからです。

 

たとえば、誰かを「妬む」という感情を無意識に抑圧すると、それをシグナルとして使うことはできません。

 

自分が相手を「妬んでいる」という自覚のないまま、もっともらしい理由をつけて相手の足をひっぱるような行動に出るかもしれません。

 

自分の「妬み」の感情をごまかさずに受けとめることができれば、自分が生活のなかで我慢していることや、不満足なことがあると気づいて、自分のために行動することが可能になります。

 

感情次第なのではなく、自分次第なのです。

 

ネガティブな感情も「悪者扱い」せずに、「こう感じている」とそのまま受けとめることで、私たちは自分自身を受け入れることができるようになり、自分も人も大切にするよりよい行動を選択することが可能になります。

 

自分のペースで、自分に対して思いやりを持って、自分の感情と付き合っていきましょう。

 

感情①子どもの感情の社会化

これをしていると楽しい、ここにいると安心する、あの人のそばにいるとイライラする…感情は、自分にとってその状況がどういうものかを教えてくれます。

 

たとえば、「怖い」という感情、「怒り」という感情がなかったら…私たちは危険な状況、理不尽な状況から身を守れない。どんな感情もシグナルの役割を果たすものです。

 

そして、私たちは感情を身体感覚として体験します。楽しいと体が軽く、エネルギーがめぐっている感じがします。

 

安心している時には、呼吸は深く、身体のどこにも変な力が入っていません。

 

逆に落ち着かない時には胸のあたりがモヤモヤざわざわしますし、悲しい時には、みぞおちが硬くなって涙が出てきます。

 

感情は自己防衛と生命維持のために身体に備わった機能です。生まれたばかりの子どもは、本能的な欲求が満たされない時、泣いて不快を表現し、欲求を満たして!と養育者にメッセージを送ります。

 

そして、本能的欲求が満たれると微笑んで快を表現します。そういった基本的な欲求を保護するための即時的な体験(原始情動)が感情の基盤にあります。

 

もともと身体感覚として生じる感情は、成長とともに言葉に置き換えられていきます。

 

ただ体を使って、衝動的に(笑う、飛び跳ねる、泣く、叫ぶ、叩くなど)感情を表現していた子どもが、次第に自分の気持ちを言葉で表現するようになるためには、養育者をはじめとする周囲の大人が、子どもの感情を察知し、子どもに働きかける必要があります。

 

「がっかりしてるんだよね」「悔しいんだよね」「怒ってるんだよね」「うれしいねえ」「どんな気持ち?言ってみて」という大人の積極的な働きかけによって、子どもはどのような身体感覚や行為がどのような感情の言葉と結びついているのかを学習していきます。

 

自分の気持ちに名前がつくと、子どもはそれを言葉で表現できるようになります。他者の感情を推し量ったり、気遣いをする感情も育っていくのです。

 

それが子どもの感情の社会化のプロセスです。

 

そして、子どもは、だんだんと使える語彙が増えて、喜怒哀楽を多様な言葉で表現できるようになっていきます。

 

子どもは周囲の大人が、感情をどのように表現しているかを見て、そこからも学んでいきます。

 

大人が率直に自分の気持ちをどのような言葉で表現しているかを見て学び、言葉では表現されない感情も、大人の表情や態度、声の調子などから読み取って、自分のものにしていくのです。

 

もし、子どもの周りにいる大人が、自分の感情を言葉にすることがなければ、子どもは自分の感情を言葉で表現することを学べなくなります。

 

自分の感情を表現した時の大人の反応によって、「この気持ちは持ってはいけない」「この気持ちは表に出してはいけない」と学べば、日々の生活のなかで湧き起こってくる自分の感情に、対処することは難しくなります。

 

また、大人が自分のネガティブな気持ちを暴力で表現しているのを見て育った子どもは、暴力で問題を解決することを学んでしまいます。

 

自分の感情、特にネガティブな感情に対処するのは難しいと感じる人は多いものです。ネガティブな感情と付き合うのが難しいのはなぜでしょう?

 

その理由のひとつは、私たちが育つ中で学習した社会の価値観です。日本社会には感情を出さないことをよしとする文化があります。

 

喜怒哀楽をあからさまに表現しない、怒りや悲しみといったネガティブな感情を表に出さず耐え忍ぶことを美徳とする文化です。

 

私たちは小さな頃から「そんな風に感じてはいけません」「人を嫌ってはいけません」「怖くない怖くない」と言われて育ちます。感情については「ダメダメ教育」を受けてきたのです。

 

だから、「ネガティブな気持ちとはこう付き合いましょう」「腹が立った時にはこうしましょう」「嫌いな人とはこういうふうに付き合いましょう」と教えられる機会は少ないでしょう。

 

つまり、ネガティブな感情を適切に表現し、コミュニケーションをするスキルを身につける教育がないのです。

 

そして、喜んでいたら「調子に乗っちゃだめ」「天狗になってる」と言われるなど、ポジティブな感情も表現しないようにと言われることもあります。

 

自分の感情をそのまま受けとめて、人に対して適切に表現していくことは誰にとっても難しいのです。

 

また、感情に対する価値判断と「らしさ」の問題にはかかわりがあります。

 

「女は感情的」で「男は理性的」という言葉があります。これは事実ではないのですが、そう考えている人は少なくないでしょう。そして、男女それぞれに感じていることを肯定できない感情が存在します。

 

たとえば、男性にとって自分が何かを「怖れ」ていることは、自分にも周囲にも隠したい感情でしょう。

 

怖れの感情を払拭し、「いくじなし」と言われないように、自分の「男らしさ」を証明するために、感情を出さないでいたり、逆に攻撃的になることはよくみられる行動です。

 

女性にとっては「怒り」がその種の感情かも知れません。

 

私たちの社会では、女性と男性が同じように怒っていても、「らしさ」のフィルターを通すことで、「感情的な女性」「怖い女性」という否定的な評価を受けることがまだまだありますし、女性もそういう自己評価をしがちだからです。

 

感情は生命維持のために身体に備わった機能であり、状況に対する生体の反応です。「そんな感情を持つのは男性(女性)らしくない」という価値観によって、生じたり生じなかったりするのものではないのです。

 

「こうあるべき」という価値観に縛られれば縛られるほど、感じたままを受けとめ、うまく表現していくことは難しくなります。

深呼吸がうまくいかない時

人は呼吸をしないと死にます。呼吸は、息を吸うことによって酸素が肺に取り込まれ、血液とともに体中に運ばれ、肺に集まった二酸化炭素が呼気とともに体の外に出て行く、そして、また新たな酸素を取り込むという連続的な活動です。

 

呼吸は自律神経系の中で唯一、自分でコントロールできる身体機能です。私たちは、意識的に呼吸を変化させることで、自分の気持ちを落ち着かせることができます。

 

人は太古の昔から、さまざまな呼吸法を見出し、メンタルヘルスに役立ててきました。

 

人の脳内には、喜びや興奮に反応するドーパミン神経、不安や恐怖に反応するノルアドレナリン神経があり、喜怒哀楽の感情は、これらの神経の働きによって生まれます。

 

両方の神経のバランスを取ることで穏やかな状態が得られるのです。

 

ドーパミン神経とノルアドレナリン神経のふたつをうまくコントロールして、心の落ち着きをもたらす鍵を握るのはセロトニン神経です。呼吸を整えることで、セロトニン神経を活性化させることができるのです。

 

あなたは、普段どんな呼吸をしていますか。私たちは、いつもは呼吸にそれほど注意を払わずに過ごしていますが、呼吸は状況によって絶えずその動きを変えて、私たちの心と体のバランスを取ってくれています。

 

今日は次の4つの呼吸法を紹介します。興味があれば試してみて下さい。

 

 

1.深呼吸がうまくできない時の呼吸

 

ストレスがかかる状況の中で、自分が息を詰めている、息をうまく吸ったり吐いたりできなくなっていることに気づくことがあります(それが常態化していると気づかないままでいることもあるのですが…)。

 

その時に、「深呼吸しなきゃ!」「腹式呼吸しなきゃ」「吐く息を吸う息の倍の長さにして…」などと考えて、深く長い呼吸をしようとする。

 

リラックスしようと深呼吸をしてみるけれど、うまくいかない。それどころか、ますます緊張して息が苦しくなる。そんな経験はないでしょうか。

 

実は、呼吸が浅くなり、体が緊張している時に、頑張って深くて長い呼吸をしようとすると、ますます体が緊張してしまい、胸や肩や背中、横隔膜が動きにくくなり、呼吸ができなくなることが多いのです。

 

そんな時には、「体を緊張させない」呼吸をするとうまくいくことがあります。

 

やり方は以下の通りです。

 

 

①「吐く」と「吸う」の間にポーズを入れない、途切れない呼吸をする。吐く息を無理に長くする必要はない。

 

②体に力を入れない。体に力が入らない、軽くて浅い呼吸をする。極端に言えば、鼻先だけでスースーするような呼吸でもいい。

 

 

 2.交感神経と副交感神経のバランスを調整する呼吸

 

この呼吸法は、緊張し過ぎでもなく弛緩し過ぎでもない、ニュートラルな状態を作ります。

 

①「体を緊張させない呼吸」を用いて、途切れない呼吸のリズムをとる

 

②息を吸うときに、体のどこかにじんわり力をいれる

 

③吐きながら、ゆっくりと少しずつ力を抜いていく

 

②→③を繰り返す

 

 

3.頭をスッキリさせたい、集中力を高めたい時の呼吸

 

これは、よく知られた、ヨガの片鼻呼吸です。

 

①右手の中指と人差し指を眉間に軽く置く

 

②右手の薬指と小指を、左の鼻孔側面に、親指を右の鼻孔側面にあてる

 

③右手の親指で右の鼻孔を押さえて閉じ、左の鼻から息を吐いて、その後に息を吸う

 

④右手の薬指と小指で鼻孔を押さえて閉じ、右の鼻から息を吐いて、その後に吸う

 

③→④を繰り返す

 

 

 4.揺れる飛行機に乗っている時、過呼吸になりそうな時に役立つ呼吸

 

乗っている飛行機が揺れて、緊張して、少し怖くなって、ドキドキしたり、体の揺れで不快になったことはないでしょうか。

 

そんな時に役立つのが、「フックアップ」という呼吸法です。この呼吸法は「ブレインジム」というキネシオロジーのアクティビティのひとつです。過呼吸になりそうな時にも効果があります。

 

やり方は以下の通りです。

 

NPO法人日本教キネシオロジー協会作成のパンフレット「トラウマ解消に効果を発揮!ブレインジムアクティビティ」より抜粋させていただきました。

(www.edu-k.jp/info_touhoku.pdf)

 

画像は立位ですが、椅子に座ってもできますし、横になったままでも大丈夫です。ご自分の状況に応じて選択して下さい。

 

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リラックスしている時には、深くて長い呼吸が無理なくできています。リラックス時の呼吸を体が覚えていると、呼吸の乱れや緊張にも気づきやすくなります。

 

自分の状態に早めに気づいてコントロールすることによって、ストレスが限界に来るまで気づかずに気持ちが追い詰められることが少なくなります。

 

私たちは呼吸によって生かされています。

 

意識的な呼吸はストレスに対する効果的なコーピング・スキルになり得ます。日頃から自分の呼吸がどうなっているかを観察してみましょう。

 

 

 

 

境界ーboundary―②子育てと子どもの境界

子どもの頃の親との関係が「ここからは私の領域」という感覚の土台を作ります。

 

親が子どもの欲求や感情を否定せずに受けとめていくことによって、子どもは「自分なりの感情や欲求を持つことは許されている」「親の期待通りの自分でなくても、親にノーと言っても、愛される」と信じることができます。

 

安心して親から独立した「自分の輪郭」を作っていけるのです。

 

親が子どもの欲求に応えるその始まりは、自分では何もできない乳児が、オムツが濡れて、おなかがすいて身体的に不快になり、泣いて親に欲求を伝えることでしょう。

 

親が子どもの泣き声に応えて、オムツを替えて、ミルクをあげると、子どもは身体的にここち良くなって、笑顔で親に応えます。

 

また、不安になって泣いたら、親が抱き上げてくれて背中をポンポンしてくれる。それによって子どもの不安、不快感は消えていき、ここちいい感覚、安心感に包まれる経験をします。

 

子どもの欲求に応えるそうした大人の働きかけによって、身体と感情が「不快」な状態から「快」の状態に切り替わる経験は、子どもの身体の発達、神経システムの発達に直結しています。

 

交感神経と副交感神経を切り替える、状況に応じて緊張した神経システムを元の状態に戻す、強い感情や衝動を制御するといった身体機能は、人が心身の健康を保ち、人と適切に関わる力を育てます。

 

それを土台にして、子どもは次第に、大人の力を借りなくても、自分で自分の心身を調整できるようになっていくのです。

 

親が自分の基本的な欲求に応えてくれる日常生活の中で、子どもの心身は発達し、「世界は安全だ」「自分の欲求に応えてくれる人がいる」「自分は大切にされる存在だ」という感覚が子どもの内側に育っていきます。それが境界の土台になるのです。

 

親は子どもを、自分とは違う存在、親であっても誰であっても侵害できない領域を持つ存在であることを認める必要があります。

 

子どもの欲求や感情を尊重し、それに応えながら、年齢に応じて選択の機会を与え、行動の結果を引き受けることを支え、適切な行動制限もしながら子どもを見守ることが子どもの境界を確かなものにし、自尊心を育てるのです。

 

自尊心を持ち、自分の境界に自覚的な人は、誰かが自分の境界に許可なく、土足で踏み込もうとしてきた時には「ノー」の意思表示していいんだと思えています。

 

それによって、理不尽な状況で自分を守ることが可能になります。また、「ノー」と言っているのに分かってくれない人との関係を見直し、相手との間に自分にとって安全な距離を取ることもできるのです。

 

そして、自分の境界を大切にするだけではなく、周囲の人の境界にも自覚的になることができます。

 

自分が親にしてもらったように、他者を自分とは違う存在、侵害できない領域を持つ存在であると認識し、他者の欲求や感情を尊重して、自分の思いを一方的に押しつけてしまわないように、プライバシーに土足で踏み込まないように注意を払うことができるでしょう。

 

お互いに境界を尊重できる関係性、自分にいい影響を与え、成長させてくれる関係性を大切にしていくためには、自分の境界を侵害する人とそうでない人を見分けることが必要です。

 

それは人生を大きく左右する鍵なのです。

 

親が子どもの「境界」を侵害したり、「境界」を持つことを許さないと、逆の結果になります。子どもは「自分なりの感情や欲求を持つのはよくないことだ」「期待に応えないと愛されない、価値がない」と信じてしまいます。

 

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そして、成長してからも、他人の気持ちや期待に応えなければならない、そうできなければ自分には価値がないと考えて、自分の欲求や感情を押さえこみがちになり、自分を追い詰め「自分」がなくなっていきます。

 

また、それとは逆に、境界を侵害した親に同一化して、他者の境界を侵害するようになる人もいます。親の責任はとても大きいのです。

 

多くの人が、逆境にあっても、自分の持つ力を使って自分を守り、人と関わり、人生をサバイバルしています。

 

もし、子ども時代に、親によって境界を侵害されたり、境界を持つことが許されなかったことで、人生が大きく左右されたとしても、私たちには親の影響を越えて、自分らしい人生を取り戻していく力があるのです。

 

 

 

境界―boundary―①自分の輪郭

誰にでも「ここからは私の領域。土足で踏み込まれたくない」というラインがあります。

 

境界(boundary)は、「私を他の誰ともちがう独立した存在としてかたちづくり、他者の侵害を許さない」領域、「自分らしさ」をかたちづくる自分の輪郭です。

 

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 境界には、身体の境界、感情の境界、責任の境界などがあり、さまざまな領域にわたります。

 

知らない人が、体が触れそうなほど近づいてきたらどんな気持ちになりますか?

 

それ以上近づかれると落ち着かない、自分の同意なしに体に触れて欲しくない…。これは身体の境界の問題です。

 

感情の境界はどうでしょう?落ち込んでいたり腹が立っている時に、周りから「落ち込む(怒る)ほどのことじゃないよ」と言われてその気持ちを押さえ込んでしまうと、後でつらくなります。

 

感情は感じているその人のもので、こう感じるべきだ、感じるべきではないと他人から指図されたり、コントロールされていいものではないのです。

 

責任の境界もとても大切です。日ごろの生活のなかで、何が誰の責任なのかを考えて行動しているでしょうか?

 

頼ってくる相手にノーと言えずに、本来は相手が負うべき責任を肩代わりし過ぎると、怒りがつのってきます。

 

それとは逆に、相手に対して「何とかしてあげなくては」という思いから世話を焼き過ぎることが相手の負担になることもあるでしょう。

 

そして、相手が不機嫌だと自分の責任のように感じることも責任の境界にかかわることです。

 

自分がどうしたいか、どういう気持ちなのか、何が大切かということよりも、相手の期待や感情、あるいは社会の価値観(「こういう時にはこうするべき」)を優先して自分の行動を決めていると、「自分らしさ」や「自分の輪郭」があいまいになってきます。

 

これは境界を持てず、自分を大切にできていない状態です。

 

また、すごく苦しいのに「私は大丈夫。助けはいらない」という態度をとる。くたくたなのに、休まずにがんばり続ける。

 

だれかに怒っている気持ちを必死でおさえこんで、平気を装う。心を閉ざしているのに誰にでも愛想よく親しげにふるまう…。

 

自分の感情にそぐわない行動を続けていると、だんだんつらくなっていきます。

 

そんな自分に優しくできずに、自分を責めてしまったり、自分の本当の姿をいつか誰かに見破られるのではないかという不安が募るかも知れません。

 

感情を押さえ込むと、自分の欲求や感情が分からなくなくなり、自分がどんな人間なのかもつかみづらくなります。

 

その状態が続くと、自分の中に怒りや悲しみといったネガティブな感情が積み重なってしまいます。我慢し続けて、とうとうキレてしまったり、過労で倒れてしまったり、酷く落ち込んでしまったりするかも知れません。

 

それは自分の内側からSOSが出ているサインです。自分がつらくなるほど無理をしていないか、自分の外側の基準に合わせ過ぎていないかをみていくことは大切です。

 

境界はまた、人との安全でここちいい距離を教えてくれるものでもあります。

 

プライベートに土足で踏み込んでくる人や、決めつけや否定ばかりしてくる人、こちらの話を聞かないで一方的に要求を通そうとしてくる人、自分の思うようにならないと攻撃的になる人からは、自分を守る必要があります。

 

そういう人といるとどんな気持ちになるでしょう。不快になる、不安になる、緊張する、怖くなる、落ち込む…。それは自然な、あたりまえの感情です。

 

「そんなふうに感じてはいけない」と我慢する必要はありません。そんな時には、相手に「ノー」と言っても、相手と物理的にも心理的にも距離をおいてもいいのです。自分を大切にしましょう。

 

私たちは状況に応じて、相手によって、どうしたいのか、何を優先するのか、どこまでするのかを決めています。そのときに決め手になるのは「感情」です。

 

何かを頼まれた瞬間どんな気持ちになるか、その頼みごとを引き受けて怒りを抱え込むことにならないか、友人の愚痴を聞くことにうんざりしていないか、自分に向き合うのが不安だから相手の世話ばかりしていないか…。

 

境界をうまく持てない時にはその背景にある感情に目を向けると何かが見えてきます。

 

日々の一つひとつの出来事の中で、自分がいまどんな気持ちになっているかに気づくことで、自分のためのよりよい行動を決めやすくなり、相手とのよりよい距離感も取りやすくなります。

 

人と自分の間に安心できる距離を保つこと、自分の欲求や感情をいつわらないこと、責任を抱え込まないこと…境界を持つことは、心身の健康やその人らしさを大切にすることに直結しています。

 

そして、私を主語にした発信、自分も相手も大切にするコミュニケーションがしやすくなるのです。

 

人とコミュニケーションする時には、まずは、自分がどうしたいのか、自分にとって何が大切なのか、いまどういう気持ちなのかといった、「境界の内側」をはっきりさせて、それを相手に伝えていく必要があります。

 

そして、相手がどうしたいのか、どんな気持ちなのかも確認していきます。

 

その時には、自分の欲求と他者の欲求、自分の感情と他者の感情を区別したり、お互いの価値観を尊重しあったり、違いを認め合っていく必要もあります。

 

自分と自分以外の人の「境界」を意識して人とかかわることで、よりよいコミュニケーションが可能になるのです。

 

どんなことでも、自分はこんなふうにしたい、これはやりたくないという思いを大切にする。いやな感じやノーと言いたい気持ちを大切にする。

 

お互いに尊重し合える人、安全で安心できる人と親しい関係を育てていく…。日々の生活の中で、自分の「境界」を守っていきましょう。

 

 

ご挨拶

メンタルヘルス分野で働く夜型人間が、眠れない夜に、

 

心理学について綴ります。

 

かつて子どもだったあなたに。

 

自分を大切にしたいあなたに。

 

子育てをしているあなたに。

 

すべての子どもを守りたいあなたに。

 

そのための情報を綴っていきます。

 

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