眠れない夜の心理学 子どもを守るために

境界・感情・愛着・トラウマティックストレス・うつ・アディクション、認知行動療法…… 眠れない夜に綴ります。

深呼吸がうまくいかない時

人は呼吸をしないと死にます。呼吸は、息を吸うことによって酸素が肺に取り込まれ、血液とともに体中に運ばれ、肺に集まった二酸化炭素が呼気とともに体の外に出て行く、そして、また新たな酸素を取り込むという連続的な活動です。

 

呼吸は自律神経系の中で唯一、自分でコントロールできる身体機能です。私たちは、意識的に呼吸を変化させることで、自分の気持ちを落ち着かせることができます。

 

人は太古の昔から、さまざまな呼吸法を見出し、メンタルヘルスに役立ててきました。

 

人の脳内には、喜びや興奮に反応するドーパミン神経、不安や恐怖に反応するノルアドレナリン神経があり、喜怒哀楽の感情は、これらの神経の働きによって生まれます。

 

両方の神経のバランスを取ることで穏やかな状態が得られるのです。

 

ドーパミン神経とノルアドレナリン神経のふたつをうまくコントロールして、心の落ち着きをもたらす鍵を握るのはセロトニン神経です。呼吸を整えることで、セロトニン神経を活性化させることができるのです。

 

あなたは、普段どんな呼吸をしていますか。私たちは、いつもは呼吸にそれほど注意を払わずに過ごしていますが、呼吸は状況によって絶えずその動きを変えて、私たちの心と体のバランスを取ってくれています。

 

今日は次の4つの呼吸法を紹介します。興味があれば試してみて下さい。

 

 

1.深呼吸がうまくできない時の呼吸

 

ストレスがかかる状況の中で、自分が息を詰めている、息をうまく吸ったり吐いたりできなくなっていることに気づくことがあります(それが常態化していると気づかないままでいることもあるのですが…)。

 

その時に、「深呼吸しなきゃ!」「腹式呼吸しなきゃ」「吐く息を吸う息の倍の長さにして…」などと考えて、深く長い呼吸をしようとする。

 

リラックスしようと深呼吸をしてみるけれど、うまくいかない。それどころか、ますます緊張して息が苦しくなる。そんな経験はないでしょうか。

 

実は、呼吸が浅くなり、体が緊張している時に、頑張って深くて長い呼吸をしようとすると、ますます体が緊張してしまい、胸や肩や背中、横隔膜が動きにくくなり、呼吸ができなくなることが多いのです。

 

そんな時には、「体を緊張させない」呼吸をするとうまくいくことがあります。

 

やり方は以下の通りです。

 

 

①「吐く」と「吸う」の間にポーズを入れない、途切れない呼吸をする。吐く息を無理に長くする必要はない。

 

②体に力を入れない。体に力が入らない、軽くて浅い呼吸をする。極端に言えば、鼻先だけでスースーするような呼吸でもいい。

 

 

 2.交感神経と副交感神経のバランスを調整する呼吸

 

この呼吸法は、緊張し過ぎでもなく弛緩し過ぎでもない、ニュートラルな状態を作ります。

 

①「体を緊張させない呼吸」を用いて、途切れない呼吸のリズムをとる

 

②息を吸うときに、体のどこかにじんわり力をいれる

 

③吐きながら、ゆっくりと少しずつ力を抜いていく

 

②→③を繰り返す

 

 

3.頭をスッキリさせたい、集中力を高めたい時の呼吸

 

これは、よく知られた、ヨガの片鼻呼吸です。

 

①右手の中指と人差し指を眉間に軽く置く

 

②右手の薬指と小指を、左の鼻孔側面に、親指を右の鼻孔側面にあてる

 

③右手の親指で右の鼻孔を押さえて閉じ、左の鼻から息を吐いて、その後に息を吸う

 

④右手の薬指と小指で鼻孔を押さえて閉じ、右の鼻から息を吐いて、その後に吸う

 

③→④を繰り返す

 

 

 4.揺れる飛行機に乗っている時、過呼吸になりそうな時に役立つ呼吸

 

乗っている飛行機が揺れて、緊張して、少し怖くなって、ドキドキしたり、体の揺れで不快になったことはないでしょうか。

 

そんな時に役立つのが、「フックアップ」という呼吸法です。この呼吸法は「ブレインジム」というキネシオロジーのアクティビティのひとつです。過呼吸になりそうな時にも効果があります。

 

やり方は以下の通りです。

 

NPO法人日本教キネシオロジー協会作成のパンフレット「トラウマ解消に効果を発揮!ブレインジムアクティビティ」より抜粋させていただきました。

(www.edu-k.jp/info_touhoku.pdf)

 

画像は立位ですが、椅子に座ってもできますし、横になったままでも大丈夫です。ご自分の状況に応じて選択して下さい。

 

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リラックスしている時には、深くて長い呼吸が無理なくできています。リラックス時の呼吸を体が覚えていると、呼吸の乱れや緊張にも気づきやすくなります。

 

自分の状態に早めに気づいてコントロールすることによって、ストレスが限界に来るまで気づかずに気持ちが追い詰められることが少なくなります。

 

私たちは呼吸によって生かされています。

 

意識的な呼吸はストレスに対する効果的なコーピング・スキルになり得ます。日頃から自分の呼吸がどうなっているかを観察してみましょう。