認知行動療法ってどんなアプローチ?②<自動思考>と<体系的な推論の誤り>と<スキーマ>はどんな関係?【前編】
<自動思考>って何?
この”友だちが時計をちらっと見た”エピソードで、前者の頭に浮かんだ考え(「私と話していても退屈なんだ」)のように、ある状況で「自動的に、瞬間的に頭の中に湧き起こってくる考え」を「自動思考」といいます。
「自動思考」は、自分の慣れ親しんだネガティブな思考や行動のパターンを理解するための糸口になります。
「自動思考」が、現実に照らし合わせて適切なもの、肯定的な自己イメージを強化するものであるなら、何の問題もないのです。
問題は、それが現実と離れたものであったり、歪んでいて、自分がそう思い込んでいるネガティブな自己イメージが強化されて定着してしまっている場合です。
<体系的な推論の誤り>って何?
認知行動療法を確立したアメリカの精神科医アーロン・ベックは、「うつ病は『感情の病』ではなく、『思考の病』である」と考え、先述した「認知行動モデル」をうつ病治療に応用しました。
彼は「認知の歪み」を修正するアプローチを体系化し、「認知の歪み」を「ネガティブな自動思考につながる体系的な推論の誤り」として概念化し、以下の様に分類しました。
それぞれに具体例をあげながら、説明していきましょう。
この例のように、すでに起こった出来事を否定的にとらえるだけではなく、未来の事、自分がこれからしようとしている事についても、「きっとうまくいかない」と考えることもあります。
何事に対してもネガティブな結論を出してしまうと、「事実」がどうなのか検討しないままになってしまいます。
状況に関係なく、「常にこうしなければならない」「100%できなければ何の意味もない」という考え方は自分を追い詰めます。
周囲からは「忙しくても時間を作って継続してる。すごいな」と評価されている人が、自分ではそう思えずに自分を追い込んでいることは少なくないのです。
これもよくあるパターンです。
このパターンが起動すると、「賛成してもらった箇所はこの方向でまとめればいい。そして、反対意見を参考に修正を加えて、次の会議で再度みんなに聞いてもらおう」という、肯定的な部分と否定的な部分の両方を見て妥当な判断をすることができなくなります。
この場合、「本当に”いつも”そうなのか」が検討されないまま、その人の中で「いつもそうだ」というただの思い込みが「事実」になり、自分をディスカウントする結果になっています。
事実は、たまたま不得意な分野で手こずっただけかも知れないですし、場合によっては、仕事の質を高めようとした結果、手こずったのかも知れないのですが、それが見えなくなっています。
「私なんてたいした人間じゃない」と、自分をディスカウントするのが通常モードになっている場合、自己イメージに合わない周囲の肯定的な評価を小さく見積もりがちになります。
④で、悪いことは「いつもそうだ」と考えたのとは逆に、肯定的なことは、「たまたまうまくいっただけ」と考え、ここでも「事実」が見えなくなっています。
友だちは何か他のことでイライラしているだけかも知れません。確認してみなければ本当のところは分からないのですが、ただちに「自分が原因だ」と考え、相手とのやり取りや自分の言動を延々と振り返って自分にダメ出しをしたり、「嫌われた」とくよくよしたり…。
後日、友だちが他のことでイライラしてたのが偶然分かって、気が抜けるということもよくあることです。
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このような「体系的な推論の誤り」があると、自分のまわりで起こる出来事について妥当な見方ができなくなることがご理解いただけたと思います。ものの見方に問題が生じていると、さまざまな「問題」が出てくるのは当然だと言えるでしょう。